今日私達が知っている三国志は主に、正史の三国志に脚色を加えた「三国志演技」です。魏から発展した晋が、漢を倒して新たな王朝を建てた為、正史では魏を正当な漢王朝の後継国として描いています。しかし「三国志演技」は蜀を主人公として、後年羅漢中が「読み物」として作り、民衆の間で親しまれてきました。読み物として描いた為、それぞれのキャラクターが強調され、多くのエピソードが加えられました。今回は「三国志演技」で主人公として、数々の活躍をみせる蜀の主要武将達の知りたくなかった(笑)をエピソードをご紹介致します。
趙雲は他の五虎大将の中では格下!?
蜀の五虎大将といえば関羽、張飛、馬超、趙雲、黄忠ですよね。しかし、五虎大将という役職自体が「演技」での創作なのです。ほんとうの役職は左将軍・右将軍が武将の最高位で、趙雲以外の四人がそれぞれ役職についています。このことから、趙雲は出世レース上は後からやってきた黄忠・馬超に追い抜かれていることが分かります。
また趙雲は、かなり老将だったかも知れないという説があります。劉備が亡くなった後、孔明が行った第一次北伐の際に既に70歳を超えていたという資料があるのです。これが本当であれば、主君の劉備よりも年上であったということになります。
蜀の老将といえば黄忠が有名です。老将というだけで、三国無双等でゲーム化する際もどうしても人気の出ないビジュアルになってきました。しかし実際は趙雲も老将で、黄忠の方が格上の役職であったのなら、なんだか不憫な気がしますね。また若武者のイメージが定着している為、蜀の中でも若くてかっこいい人みたいなイメージを持っていた方にとっては肯定したくはない説でしょう。
なぜ趙雲はこんなに良いイメージが付いたのか?
基本的には趙雲の活躍は「演技」による創作です。「演技」は蜀側に立って描かれたものなので、蜀びいきです。しかしなぜ趙雲だけここまで特別扱いなのでしょうか。それは趙雲が「演技」の作者羅漢中と同郷であるからです。執筆の際、自身の作品の上では同郷の先輩を目立たせてあげようと思ったのでしょう。以下は趙雲が人気者になるまでの、筆者の勝手なイメージです。
きっとこんな感じだったかと…。羅漢中としてもまさか自分の書いた小説がここまで歴史のイメージとして定着するとは考えていなかったのでしょう。
まさか長坂坡での活躍も…
こうなると長坂坡で阿斗(劉備の跡継ぎ)を救ったこともすべて創作かと思ってしまいますが、阿斗を救ったことは史実です。しかし単騎で曹操軍数万の軍勢を突き進んだというのは創作です。ド派手ではないですが、しっかりと活躍をしているんですね。また左右将軍にまではなってはなかったものの、劉備の信頼を得た優秀な将軍であったということは間違いないと思います。
ほんとは頭が良い張飛
張飛も「演技」により、キャラクターが強調されています。しかし趙雲と違うのは、蜀の将軍であるのに「演技」による脚色で迷惑を被っていることです。
劉備が初めて役人に取り立てられた際に、張飛が横暴な上司に腹を立てて鞭打って土地から追い出されたことがありました。しかし、史実で鞭打ったのは劉備です。実は劉備は短気であったようです。「演技」では理想の上司はそんな荒っぽいことは決してしませんので、ことごとく張飛の役割になっています。
また正史では度々計略を巡らせて、敵を打ち払う活躍を知将の一面をみせています。
暴れん坊のイメージで損ばかりしているかといえば実際はそうではありません。強く、酒好きで、大暴れをして物語をかき乱す人物として中国ではとても人気がありますし、どこか憎めなところが愛らしいキャラクターとして日本でも親しまれています。
関羽の活躍
三国志で最も人気の高い武将といっても過言ではない関羽も「演技」での脚色されたイメージが浸透しています。関羽といえば曹操に投降した際、袁紹の猛将文醜と顔良を打ち取ったシーンは印象的だと思います。しかし正史では、文醜を打ち取ったのは関羽ではありません。荀攸(じゅんゆう)の策に陥った文醜は曹操軍に打ち取られています。
また「関羽千里行」も実態は違ったようです。「演技」では曹操からもらった赤兎馬を飛ばして、千里の道と5つの関所を破って劉備に帰るまでの道中をドラチックに描かれています。しかし実際の距離は千里には程遠く、100キロ弱の道のりでした。その上「演技」通りの道筋を通ると、物凄い遠回りをした挙句、途中来た道を戻っています。
関羽は後年の人から武神として親しまれている為、羅漢中もいくつかのエピソードを挿入し、さらに“義”の人というイメージを強調したのでしょう。
まとめ
如何だったでしょうか。今回は「三国志演技」の主要な人物が活躍するシーンを、「正史」と比較してツッコミを入れる形で作ってみました。特に趙雲にはネガティブな内容をたくさん書きましたが、私は趙雲好きですよ!
最後までお読み頂きありがとうございます。